お待たせしました。有機農協のネットショップ有機市場再開しました。 北海道有機市場

ハラハチファーム(中村欣)・安平町

有機圃場面積:528a 認定機関・認定番号:北農会・第25001号-01
アスパラ、シンディスイート、大豆、小麦

みらいすくすく通信第458号・459号で紹介(2020.7)

 中村欣(やすし)さんは2013 年にハラハチファームをスタート。就農2 年目までは有機農協へ年間20 品目ほどの野菜を供給していましたが、今では中玉トマトと春先のハウスアスパラ程度。一体何があったのでしょう。
 中村さんは芽室町出身。高校、大学とバレーボールに明け暮れた、身長180cmを超えるアスリートです。明け暮れたと言ってもそれはプロを目指すほどで、社会人時代は国体にも出場した国体選手。曰く「バレーしかやってこなかった」ということで、就職も昼間練習ができるようにと夜勤型(19:00 ~ 4:00)の札幌の会社へ進みます。順調に結婚、そして子どもを授かった頃、奥様に病気があることがわかり、医者から「食を変えた方がいい」と言われました。「当時は安くてお腹を満たせばよく、食について何も考えていませんでした」それから生産地や添加物などを気にするようになり、同時に始めたのが家庭菜園。「美味しいし、楽しいし、感動しました」畑の大きさもどんどん大きくなり、気が付くと30 品目は作っていたようです。
 そして子どもの成長に伴い、新居を構えることに。その頃には、生活の中で家庭菜園の比重がかなり大きくなっていたので、大きな畑のある家を探すのですが、予算内ではなかなか見つかりません。いよいよ札幌を諦め、長沼に「ここなら!」という場所を見つけた時、たまたま近くで農業を営む方に話を聞く機会があり、大きな転機がやってきます。「その方は自然栽培で野菜を作り、宅配のみで生計を立てていました。自分も農薬で苦しんだという方で、野菜への向き合い方、自然への向き合い方をいろいろと話してくれて、感銘を受けました」突如として自分の中に、「農家」という選択肢が芽生えました。
 家を買うということイコール一生、会社員として生きるのか、それとも農家の道を選ぶのか。大きな選択が立ちはだかり、新規就農をあっ旋するイベントや相談会に相当数参加しました。夢を熱く語ってくれる人もいれば、現実の厳しさを教えてくれる人もいて、その度に「これは天職だ!」「いや僕なんかにできるわけがない」と振り子のように行ったり来たり心変わりをしたそうです。それでも最後にイベントで小路さんと出会い、彼の自給自足的な暮らしに共鳴します。
 2011 年33 歳の春、10 年の会社員生活に別れを告げ、趣味レベルを超え野菜を作ってきた自信、スポーツで培った体力、そして将来への希望に溢れ、安平での研修生活をスタート。奥様のお腹には2 人目の子どもが宿っていました。
 研修は2 年。1 年目は無何有の郷農園の補佐、2 年目はある程度の場所を任され好きな野菜を作りました。好きなことに打ち込め、さぞかし楽しかったかと聞くと、とんでもなくキツかったとの答え。「無何有の郷農園は根菜が中心で収量も多い。自信があった体力がまずアウト。僕の代のあとは収穫機なんかを購入されてずい分と楽になったそうですが(笑)。それと会社勤めは一業種だったので営業的に指導いただくことも多々ありました」この研修では技術だけではなく、有機農家としての基本知識や経営、他の農家との付き合い方に至るまで、さまざまなことを学んだそうです。
 そして2013 年、無何有の郷農園の一部を借りて、めでたく就農の運びとなり、有機農協へ20 品目ほどの出荷を果たします。「もう記憶がないくらい朝から晩まで働きました。これだけやればけっこう収入が上がっているはずだろう」2 年目の収穫を終えた冬、中村さんは帳簿に残った金額を見て愕然としました。「これだけやって、たったこれだけ。お先、真っ暗…」。奥様のお腹には3 人目の子どもが宿っていました。

2 本仕立ての斜め誘引栽培。シンディスイートは幹が太いので1 本仕立てよりも安定するといいます

 就農2 年目のシーズンを終えて、売上金額に愕然とした中村さん。このままでは家族が路頭に迷うと、バレーボールで培った根性とアスリートの戦術よろしく3 つの作戦を立てました。
 1 つめは、場所を広いところに変え収量を上げること。2 つめは品目を厳選すること。そこで選んだのは中玉トマト、シンディスイート。「もともとトマトは大の苦手でした(笑)。それが研修中の暑くてヘトヘトな中、同じ安平で有機トマトを作る俣野さんのトマトをいただいて、それがもう美味しくて!」自分でもいろいろ作って試した結果、甘味と酸味のバランスが絶妙なシンディスイートに惚れ込み、またトマトは生産者が多く参入が難しい中で、中玉トマトを作る人が少ないことも決断を後押ししました。そして3つめは個性を打ち出すこと。野菜だけでは差がつきづらいと考え、敷地内に加工所を設けジュースやジャムの製造に取り掛かります。自信のシンディスイートを中心に作るトマトジュースは塩などが入らない有機トマト100%。「加工業者に委託すると中身が見えないから」と、種まきから瓶詰めまで手作りというこだわりようです。飲んでみるとなるほど甘味と旨味が凝縮した唯一無二の味。そしてパッケージも知り合いを通じてプロに頼み、個性的なものが出来上がりました。
 今季が就農8 年目。忙しさは相変わらずのようですが、ハラハチの精神で何とかやってきましたとのこと。ハラハチとは農業を始めた当初、頑張りすぎては続かないと、行き詰ったことから得た教訓で、何事も余裕をもって臨もうという思いを込めたそうです。
 「こちらに来て妻の病気も良くなりました。あとは自給自足への憧れがあります。今まで口にはしてきませんでしたが」「自給自足なんて早々簡単にできるものではない」とは農業界では先達からの戒めとしてよく言われる言葉。それでもここ安平を選んだのはお米のできる土地というのも大きく、現在はななつぼしを天日干しで作り、養鶏で卵も得ています。水は井戸水を引き、電気も自然エネルギーを自家利用し、理想の生活へと近づいています。
 さらにこういった信念は、野菜作りにも表れています。「できるだけ人間が動かさない」というのがモットー。トマトの作り方はかなりこだわりがあるといえるかもしれません。不耕起。マルチシート不使用。既成肥料不使用。灌水(水やり)は通路に行います。「畑は起こさずにみみずや微生物の自然の力に任せます。マルチで人為的に地温を上げず、水も根元にかけるのではなく遠くにやることで強い根が伸びていきます。野菜自身の速さでゆっくりと育つことで、強くなるのだと思います」
 シンディースイートは、大玉トマトより糖度が高くミニトマトより濃厚。まさに大玉とミニのいいとこ取り。数多あるトマトの中でファンが増えいてるのも頷けます。そのうえで、トマトが大の苦手だった生産者が惚れ込んだことを思い出して齧っていただくと、美味しさが倍増することでしょう。
「人間らしい生活への渇望」
 10 年に及ぶ夜型の生活から家庭菜園をきっかけに、日光を浴び、土の上で根を張って生きるという、眠っていた遺伝子が揺り起こされました。自身の力で伸びていくシンディスイートの幹が、背の高い中村さんの姿に重なります。

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