有機農協のネットショップ有機市場・旬の有機野菜を全国へお届け。 北海道有機市場

土井 弘一・南幌町

有機圃場面積:1082a 認定機関・認定番号 JASCERT・A03-100602

みらいすくすく通信第525号で紹介(2021.11)

 「20代の頃、アレルギー科の病院に呼ばれて行ったところ、アトピーのお子さんがいるお母さんに泣きつかれて。『この子にお米を食べさせたいんですが、あげるお米がないんです』と。そしたらやるしかないでしょう。それが始まりかな。」

 土井さんは、先祖が明治時代に徳島から移植してきた米農家の3代目。先代から経営を引き継ぐ辺りから地域にも農薬、化学肥料が広がり始め、これでいいのだろうかと思い悩んでいた折にアトピーやアレルギーに苦しむたくさんの子どもたちがいることを知り、有機米を作っていくことを決断しました。周りには有機に取り組む人がほとんどいなかったため、根本的な学びを得ようと単身、フェリーに乗り、東京のビルの1室を訪ねました。出会ったのは一楽照雄氏。有機農業の名付親とも言われる先駆者で、日本有機農業研究会創立者です。開口一番「金儲けで有機をやろうとする奴は帰れ!」と叱責されたそうですが、そうではないのだとこちらも激しく反論したところ、先祖が同郷ということもわかり理解を得、それどころか家に招かれては3泊し、売り先となる消費者やベテラン生産者まで紹介してもらいました。他にも伝手をたどり、有機稲作の大家、稲葉光圀さん、微生物や発酵の研究者、趙漢珪(チョウハンギュ)さん等、視察や勉強、時には自分の田んぼに来てもらい、多くの先人の技術に自らの考えを組み合わせ、土井さんは超こだわりの稲作を実践しています。

 まずは種まき。一般的には病気予防として種を薬剤で消毒しますが、土井さんは「温湯消毒」。それも通常より温度を下げることで時間はかかりますがより強い稲を発芽させます。また、育苗は「一粒育苗」を理想として通常は1つのポットに10粒ほど種をまきますが2~3粒。これもより強く育てるための工夫です。そして田植え。一般的には深く耕すところを土井さんは微生物の住みかを壊さないよう浅く耕し、一方で「代掻き」という田んぼに水を張って土の表面を滑らかにする作業を多く行うことで雑草を出づらくします。雑草対策には発酵したくず大豆や米ぬかの発出する酸も活用しています。また、防虫対策としては畔の草を高さを調整して敢えて残します。これで害虫は稲よりも美味しい畔の草を食べるのだといいます。また田んぼには稲にとっての益虫が多く、害虫が来たところでどんどん食べてくれる生物多様性の環境ができあがっているのです。収穫も、収量を優先させずに美味しさを優先させるため育ちすぎた米より若い米が多いように早めに収穫。収穫後も乾燥作業を2回、脱穀作業を2回、選別作業2回と、より美味しい米を送り出すことに余念がありません。「ゆきひかりは(他のお米に比べて粘り気が少ないから)美味しくないよと言って売り出すんだけど、美味しいよと言ってもらえたときは、嬉しいね」。

 現在は毎春秋、酪農学園大で有機農法に関する授業をしたり、ここ10年程、有機米の教えを求める研修生も後を絶ちません。「一楽照雄さんに諭された“産消提携”。消費者が生産者を支え、生産者は消費者のために尽力する。これが原点」。勉強家であり、勤勉家であり情熱家の土井さんのこだわりのお米。有難さを噛みしめたいと思います。

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