みらいすくすく通信第527号で紹介(2021.11)
「そりゃ僕も抜きたいんですが、有機農協さんからまだGOが出ないので(笑)。」
有機農協ではできる限りニンジンを道内産で賄おうと、道南から道東へと年間を通じてニンジンリレーを繰り広げます。現在、有機農協の倉庫はまだ道央産のニンジンが占めており、道東産の出番はもう少し先といったところ。この時期になるともう土中で成長して割れたり傷むことはないので、できるだけとれたてで、かつ冬期も長く道産で賄えるよう、収穫を待ってもらっているのです。言ってみれば池田さんは道産ニンジンリレーのアンカーです。
「今年は長ネギも例年より早くから出していますね。」長ネギもニンジン同様、有機農協としてはできるだけ切らしたくない野菜のひとつ。今年はこれまで作っていた農家が作付けをやめたことで夏場、長ネギがなくなりそうな時期がありました。それも、池田さんに急きょ対応いただくことで、長ネギも組合内で乗り切ることができました。
他にも野菜にはさまざまなものがありますが、いくら美味しくても知名度がないなど採算が合わなければ、作付けを続けるには至りません。組合としても、いろんな種類の野菜の取り扱いがある方が商品力につながるのですが、それでも作付けが続けられなかったり、世代交代もあります。そんな中で、魅力があるのになくなってしまいそうだった野菜、黄ニンジンやジャガイモのノーザンルビー、紫花豆、白花豆、そういったものの生産を池田さんは担ってきました。
池田さんは千葉県出身。首都圏とはいえ、外房という房総半島東岸の自然の中で育ち、一度は東京で就職したものの、田舎での生活に憧れていました。2 2 歳の時、当時の仕事の都合で北海道日高地方に来ることになり、その後、縁があって新得に来た時に畑付の空き家があったその畑が就農のきっかけに。本格的に野菜作りに挑戦しようと、中富良野の有機農家へ実習を受けに行き、その頃がちょうど各自治体の就農支援制度が充実し始めた時で、それならばと制度を活用して新得で2年研修し、研修先に農地を借りて就農に至りました。宮下農場の宮下さんら新得で有機で活動していることを知って挨拶に行き、有機農協のメンバーに加わりました。有機農協では7 0 歳前後、6 0 歳前後、そして4 0歳代が主な年齢分布です。今年5 2 歳になる池田さんの世代はあまり多くないのですが、6 0 歳前後の第二世代に引っ張られ、サポートしてきた層と言えるかもしれません。組織にとっても、チームプレーを理解し、かつ対応できる力があるというのはとても頼もしい存在です。
もうすぐ就農2 0 年で、今住んでいるログハウスも、就農後、自ら建てたもの。「まだまだ半人前ですが満足いくものを作れるようがんばります」という、腰が低くも器用な池田さんの姿勢が、作付けに表れています。