みらいすくすく通信第516号滝本農場を紹介しました(2021.08)
「有機農協・ホワイト・Lサイズ・10kg!」。「○〇市場・グリーン・Mサイズ・10kg!」。滝本農場、繁忙期の春の作業所。ここ10年程、お客様からの電話をワイヤレスのマイク付イヤホンで受けながら、威勢よく仕分けの指示を出しているのが滝本雄太さん。ベルトコンベアには次々と採れたてのアスパラが載せられ、太さによって自動選別されたものを母や妹ら家族で計量、梱包し、手際よく発送作業を済ませていきます。外では多い時で20名ほどの黒く日焼けした若者が籠と鎌を持って四方へ散らばり、日没まで、地面を割って出てきたアスパラを何キロも持ち寄ってはまた散っていきます。有機農協の集荷先の中でも、一際活気ある光景です。
滝本農場は先祖が明治36年に徳島から移植して農業をはじめ120年にもなろうという古株。雄太さんは4代目にあたります。360度山々に囲まれた雄大なロケーションは火山の噴火により生まれたカルデラという盆地だからで、通例は水が溜まり湖になるところ、その後にさらに羊蹄の噴火で湖が川となって流れ出し、肥沃な土、そしてホタルが生息する程キレイな水源を携えた、格好の農地となったわけです。
アスパラの実体は意外と知られていませんが、深く根を張り、数メートルの幹と枝を茂らせるまさに木。何年も生きる多年草植物で1、2年目は芽が出てもそれは採らず営利的には3年目から15年程収穫できます。私たちは、土を飛び出しエネルギーに満ちたその若い茎をいただいているのです。ヨーロッパでは紀元前から栽培されていたといわれ、全20種のアミノ酸のうち、体内で生成できない必須アミノ酸9種を含む18種をもったまさに春の必須野菜といえるで
しょう(初めて発見されたアミノ酸がアスパラのアスパラギンでもあります)。
ホワイトアスパラは一般的にはグリーンとは同品種で、一般的には盛り土をして日光に当てず栽培しますが、それを先代の和彦さんは遮光シートをトンネル状に廻らせる、当時まだ誰もしていなかった手法を編み出しました。さらには東京の大手高級量販店へアポイントなしで訪れ、なんと即決で契約を成立させてしまったのです。繊細な香りのホワイトを「カルデラの貴婦人」、味の強いグリーンを「カルデラの貴公子」、収量が難しい貴重なパープルを「カルデラの紫宮女(しゅくじょ)」と銘打った滝本農場のアスパラは、先代のアイデアと情熱によって生まれ、以降、全国的人気となって現在に至ります。
アスパラは「畑の豚」という異名があるほど肥料が必要なこともあり、滝本農場では、鶏糞、そして魚貝系の肥料など堆肥に力を入れてきました。さらにたっぷりの堆肥を土中ではなく上に盛ることで雑草対策としています。なので有機JASが施行される以前から、農薬、化学肥料に頼らない栽培を実践されており、有機JASは自然な流れだったといいます。
今年は昨年の台風や5月の低温で大不作。それもあって今までできなかった夏のアスパラ(立茎アスパラ~次年度のために茎を立たせるものの間引き)を始めたそうです。アスパラは春でしょという声も聞こえそうですが、それがどうして味わい深く、前述のアスパラの基礎的な栄養価も加味すれば、夏バテ対策に貴重な存在といえるでしょう。
敷地内に立つ家や作業所は、すべて手作りとのことですが、現在も2~3年かけて新たな作業所を建設中で、研修や雇用者の宿泊所も見据えているそうです。「自然の環境で育った露地栽培がやっぱり美味しいと思ってこだわってやっていますが、今回のような大不作があるかと思うと、冬も作業ができ雇用ができるようなハウス栽培や作物も考えなくてはいけませんね。たくさんのスタッフの力で成り立っていますから。皆さんに食べていただけるよう美味しい野菜を作っていきますので、よろしくお願いします」。エネルギーに満ちた若い芽、雄太さんが語ってくれました。
みらいすくすく通信第498号滝本農場のアスパラギフトを紹介しました(2021.04)
赤井川村 滝本農場のアスパラギフト
滝本和彦さんは、徳島県神山町から明治36 年に北海道へ渡って3 代目。美しい自然と美味しい空気と、水に囲まれた大地の
中で安心、安全を基本に美味しい有機栽培に取り組んでいます。
赤井川村は遙か大昔、大爆発で出来た噴火口に満々と水が溜まり、洞爺湖の様に大きな湖だったようです。それが、羊蹄山
の噴火の時の大地震でカルデラの一部が崩れ流れ出した水がどんどん山を削り、出来たのがカルデラ盆地です。水路は余市川
となり、仁木、余市と、果物の産地を潤して海へ注いでいます。死火山?とはいえ、噴火口に住む行政は日本で唯一「カルデラの里」赤井川村だけと聞いています。周囲をぐるりと山に囲まれたカルデラ盆地の赤井川村は、昼と夜の寒暖の差が大きく、アスパラは昼間たっぷり光合成をして養分を作り、夜はその養分を逃がさず蓄えていきます。そのために味の濃いアスパラに成長します。それは、山に囲まれた自然の要塞、自然の偉大な力の贈り物です。
滝本農場で栽培しているアスパラは3 種類。農場主の滝本和彦さんは、味や香りが力強いグリーンアスパラを「カルデラの貴公子」、収量が少ない貴重な紫アスパラを「カルデラの紫宮女」、色が白く優しい味と香りのホワイトアスパラを「カルデラの貴婦人」と名付けました。
早朝の収穫のとき、真っ暗な中で見るホワイトアスパラは真珠のように輝いて、まるで貴婦人のように見えるのだそうです。光を遮る特別な方法で栽培されたホワイトアスパラは、ほんのりとした上品な甘みとシャキシャキの食感が人気で一度食べると忘れられない美味しさです。
滝本さんが勧める
ホワイトアスパラの美味しい調理方法
- ホワイトアスパラは皮が固いので下2/3 の皮を思い切って厚く剥きます。(ピーラーを使うと簡単にできます。)
- 剥いた皮を入れた湯で茹でます。茹で加減はシャキシャキでも、よく茹でて柔らかくしてもお好みで。(ラップをしてレンジで加熱でも)
- すぐに食べない時は茹で汁につけたまま保存します。
※美味しい茹で汁はスープやリゾットなどに使えます。
- 有機農業歴と、有機農業を始めたきっかけを教えてください。
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1998年からです。1980年頃よりニンニクを製薬会社に薬品の原料として出荷していたのがきっかけです。
- 有機農業の楽しいこと・大変なこと・嬉しいことは何ですか?
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楽しい事は少ないし、苦しい事のみ多かりしでしょうか。雑草処理、病気・害虫の心配、販売の心配等。嬉しい事はホタルが殖えて来た事。安心して食べれる事。
- 自分の作った生産物の自慢をどうぞ!
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美味しいの一言です。
- お勧めの本やお気に入りの本、映画、音楽を教えてください。
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探してみたがこれという本が一冊もありませんでした。(自分の生活がお勧めです。)
本~「サトウキビ刈り援農隊(10年余り参加)、映画と音楽~グレンミラー物語。沖縄の島歌(三線の音色が気に入っています)今聞いているのはウチナーグチの「童神」 - 有機農業を通じて浮かぶ、あなたの将来の抱負は?
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環境を破壊する事無く、自然に溶け込めるような生活。