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築城農園(築城 正行)・七飯町

有機圃場面積:262a 認定団体・認定番号:JASCERT・A01-033005
人参、長ねぎ、大根、ズッキーニ

みらいすくすく通信第514号で紹介(2021・08)

 有機栽培については、先代から正行さんに代替わりするタイミングで始められました。ベトナム戦争の枯葉剤が入った農薬を東京の公園で撒いたことに、エプロンをつけたママたちが子どもを背負ってデモをしていた報道を見て衝撃を受け、無知ほど怖いものはない、と農薬、化学肥料に頼らない農業を始めたのがきっかけだそうです。

 大切にしている先達の教えのひとつが「命は命でつなぐ」という言葉。平飼いの養鶏で有精卵を販売し、鶏糞を野菜作りの肥料に使う循環農法を行っています。稲作も行っているので、もみ殻も肥料として農園内で循環しています。「有機」という言葉は、ガラス等の「無機」に対して、「生命を有する」という意味があります。鶏糞やもみ殻といった生命由来の
有機肥料が土に鋤き込まれ、また生命を宿していくのです。慣行栽培では農薬で微生物を一掃し、本来微生物が分解して生まれる栄養を化学肥料で代替しますから、ここでは全く逆。「有機野菜=生命を有する野菜」が体現されています。

 養鶏は、「美味しい卵が食べたい」と美子さんが自家用に17羽から鶏を飼い始め、ご近所に卵を差し上げていくうちに評判となって、今では1000羽を飼い販売に至ります。雌鶏は受精しなくても卵を産みますので、一般的には無精卵が流通していますが、雌鶏と雄鶏を同居させ交尾して産まれた有精卵は温めればヒヨコになりえます。ついき農園では「命を有する」有精卵にこだわっているのです。ちなみに、鶏たちは羨ましくもついき農園のお米を食べています。「美味しい卵を産んでもらうんですから、美味しいお米を食べてもらわないと。」お話の最中も卵の梱包の手を止めることなく、美子さんは笑って言います。

 そして先祖が遺してくれた最大のものが土地と水だそう。ここの畑は以前、川が流れていて水持ちがよく、どんなに日照りが続いても作物が採れないことがないそうです。実際、初夏に届いたついき農園のニンジンやズッキーニは、この干ばつにも拘らずまるまると育っていましたね。そして山から来る水が湧き出ており、作物全般のかん水に利用されています。
あの美味しいニンジンはこの畑で作られています。4月から種を露地に直播してマルチとトンネルで丁寧に保温し、2回ほど手作業による除草をして、7月には収穫を迎えるそうです。ダイコンはまた別の山の畑で作られているというので、またそれも代々伝わる土壌の相性があるのでしょう。

 築城家では先祖から何度も聞いている話があるそうです。「食べ物は命を作るものであり、農民は命を作るものを作っている。土地は天から預かっているものだから、農民たる者、食べものを作らなければならない」と。「本当は、有機野菜だなんて特別扱いしないで、それが当たり前になればいいのにね。農薬を使うなんて戦後ここ数十年の話で、その前はずっとこの作り方だったんだから。」先人の叡智や思いを大切にして、命をつなぎ、愚直に農民を実践される築城ご夫妻の言葉に、私たちもまた、食べものを理解し、そしてそれを伝えていかなければ、と痛感するのでした。

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