みらいすくすく通信第533号で紹介(2021.12)
「毎年圃場のどこか一角はひまわりを植えます。( 収量を上げるために)どうして野菜を植えないの? と聞かれることもありますが、これでみみずが増えていきます。堆肥の力を借りてみみずを増やし、栄養を土に返します」。上杉さんは土づくりを第一に考えています。約20 0アール(≒14 0 m四方)のうち毎年1区画は休耕させそこにひまわりを植えては翌年のために土に鋤き込み、微生物やみみずが棲みやすい土づくりを目指しています。今年は大干ばつで露地の根菜類は多くの農家にとって苦戦の年でしたが、大きなタマネギも実り、「化学肥料を使わないのにどうしてこんなに立派なタマネギができるの?」と驚かれることもあったそうです。
上杉さんの祖先は宮城県角田から移植してきた畑作農家。上杉さんは6人兄妹の3 男ですが、自分が継ぐことになり、地元の農業高校を出てから農業一筋で5 0 年近くになります。4 0 代、ちょうど有機の気運が世間的に立ち上がってきた頃、農業には農閑期があるので、その時期を利用して自分の作った野菜を自分で売ることができないだろうかと考えるようになりました。はじめは特栽から始めて数年後、有機に挑戦してJASを取得し、こだわりの商品を扱う食品会社への販売を見事スタートすることができました。1年の流れは2 月下旬からハウスでタマネギを育苗し、4 月にジャガイモ、ニンジンとともに露地で播種します。これまでは緑肥の他にも鶏ふん、牛ふんなどで土づくりをしてきましたが昨今は土に力が出てきたこともあり、減らすようになっています。草取りを大切に考えていて、狭い土地ではない
のでとにかく除草が大変だそうです。
「有機農業をする者は正直な者でなければやっていけない。いいことばかりではなく、大変なこともあった」と上杉さんは言います。以前、有機栽培で使用可能な資材を使っていた時、その中に使ってはいけない原料が混入していたということがあったそうです。こちらとしては寝耳に水だとしても、多大なコストや迷惑がかかり、責任も負うことになりました。それでも辞めずに長く続けてきたことで、今では行政から声をかけてもらい、ふるさと納税でも取り扱われることになりました。「長年大切にしてきた恩返しを、土がしてくれているのかなと思う時があります。有機野菜は相当な手間とリスクをかけた野菜。少しだけ想像してもらえたら嬉しいですね」。さまざまな経験をへて、覚悟をもって有機農業に対峙する上杉さんの言葉が重く響きます。